年々上昇する欧米の乳癌による死亡率の増加に対してアメリカは1990年にマンモグラフィー(乳房のエックス線撮影)検査を導入しましたが、それだけでは死亡率を減少させるまでには至りませんでした。その後、装置の精度検定を行ない、撮影するエックス線技師の撮影精度および医師の診断精度を認定試験によって管理するようになり検診精度のばらつきをなくすことでようやく乳癌による死亡率を減少に転じさせることに成功しました。

わが国でも2000年から乳癌検診にマンモグラフィー検査を導入して、技師や医師に対して認定試験を行なうようになりました。高齢者に乳癌罹患者が多い欧米に対して日本人女性の乳癌は比較的若年のまだ乳腺が多い年齢にできやすいためにマンモグラフィー検査だけでは正確な診断ができません。それを補うべく最近の乳癌検診では超音波検査が導入され認定試験も行なうようになりました。私が婦人科外来をしていた頃には、乳癌検診を受けに私の外来に来られる方が多くみられました。子宮癌・卵巣癌や乳癌は女性特有の病気ですので“婦人科”だと思うのは当然です。これまで子宮癌検診は産婦人科医が、乳癌検診は外科医がしてきた経緯があります。マンモグラフィー検査や乳房超音波検査に認定試験が施行されるようになって、外科と産婦人科が乳癌検診を行なうようになりました。

乳房疾患には乳癌以外に女性ホルモンに関係する疾患があるため日本産婦人科学会は産婦人科医による乳癌検診を推奨しています。厚生労働省の指針では2年に1回のマンモグラフィー検査と触診を勧めており現状ではまだ乳房超音波検査は指針には入っていませんが、乳癌の早期発見に乳房超音波検査が有効であることは明白ですので、間もなく乳房超音波検査が指針に組み入れられることが予想されます。私は12歳の時に母親を乳癌で亡くしました。乳癌患者およびその家族の気持ちがよく分かります。私は“絶対に乳癌を見落とさない”という信念をもって健診業務にのぞみます。乳癌には硬癌と呼ばれる進行の早い種類が全乳癌の約50%を占めています。ですから、2年に1回といわずご自分の命を毎年の3点セット(触診・マンモ・超音波)の検診でお守りすることをお勧めします。

わが国では、認定試験の合否にかかわらず日常診療・検診が行なわれています。乳癌検診に大切なのは装置(機械)と医師(人)の精度です。是非、検定に合格した装置を備えたクリニックで、マンモグラフィー検査および乳房超音波検査の認定資格を持った医師による検診をお勧めします(検定に合格したマンモグラフィー装置を備えたクリニックのリストおよび認定医師のリストはホームページで見ることができます)。

女性健診センター長 磯部 哲也

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